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作業療法士が考える、障害を持つ人が運動やスポーツをする意義

いとう かずや
2017.12.18

皆さんにとって、運動やスポーツを行う理由ってなんでしょうか?

プロのアスリートであれば、スポーツで結果を残すことが仕事で、それが収入につながりますが、スポーツを楽しむ99%はプロのアスリートではありません。いわば、愛好家の人にとってのスポーツって、どんな理由で行っているのでしょうか?

 

 

例えば、

  • 純粋に楽しいから
  • 体づくりや健康のため
  • 仲間との交流のため

…こんなところがほとんどの方にとっての理由だと思います。

作業療法士として、普段、患者さんのリハビリテーションを担当する私にとって、これらの理由を整理することは重要です。なぜなら、体を動かすことへの意欲を湧き立てられるかどうかが、患者さんの未来につながるからです。

純粋に楽しいから…という理由でスポーツを行っている方に対して、私は職業柄か、運動療法的な観点から見てしまいます。

運動療法とは、運動によって、身体の全体または一部分を動かし、症状の軽減や機能の回復を目指す療法のことをいいます。最近では、この運動療法による意欲の向上効果が注目されていて、精神疾患や発達障害といった方に対して、運動療法による症状緩和の効果も確認されてきています。

運動を行うことで、脳内物質であるドーパミンの分泌量と受容体の増加によって、多幸感を感じやすくなり、結果として、意欲の向上につながると考えられています。それこそ、俗に言う「体育会系」と言われる人たちのイメージとして挙げられるアグレッシブさも、脳科学的な理由があったと言えるかもしれません。

 

 

2つ目に挙げた、体づくりや健康のため…という理由ですが、障害を抱える方のリハビリテーションを行う際に、背骨の並びに歪みがあって姿勢の崩れがあったり、極端に猫背だったりという方を多く見かけます。障害そのものが理由の場合もあれば、障害によって必要以上に体をかばうことで生まれる症状が理由の場合もあります。

“健康な精神は健康な体から”とよく言われますが、リハビリテーションの現場にいると実感します。体の歪みや姿勢の崩れも健康かどうかのバロメーター。風邪を引いたなどの病気だけが、健康を左右するものではありません。

身体と心はリンクしていますし、お互いに影響し合っています。「自分を変えなきゃ!」「やる気をだそう」「がんばらなきゃ!」と精神論が先行していても、そのきっかけを持続させるための受け皿…つまり体が健康でなければ瞬発的なものになってしまいます。健康な精神と健康な体を作るには、やはり適度な運動が必要になってきます。

3つ目に挙げた、交流のため…ですが、ここに筋トレなど一人で行う運動と、複数の人とで行うスポーツとの違いがでてきます。

対人交流というものは、決して言葉によるコミュニケーションのみではありません。むしろ仕草や表情といった言葉以外のコミュニケーションのほうが重要視される傾向にあります。

その点、スポーツというものは同じルールという条件下で、共通した目的で運動をすることになるので、特に言葉を交わさなくても自然と交流することができるプラットフォームになります。対人交流が苦手な障害を持つ方にとって、スポーツを行うメリットはあるということです。

障害者スポーツを考えるにあたって、なにもアスリートになってスポーツを生業にすることだけが、障害者スポ―ツの楽しみ方ではありません。生活にハリをもたらすため、気分転換のため、健康のため…といった自分自身のためのスポーツという枠組みでも、十二分に楽しめる意義があると思います。

 

 

以前、障害者スポーツを一生懸命やっていると「パラ目指すの?」と言われてしまう…というエピソードを聞いたとき、この価値観が多くの障害者スポーツの敷居を高くしている原因の一つでは?と思いました。

もっと「健康のため」「楽しいから」「好きだから」という”ラフ”な気持ちで障害を持つ人もスポーツができるような環境が必要なのかもしれませんね!

 

 

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