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パラリンピックの競技会場って車いす席がどのくらい必要なの?

「障害者スポーツの未来」取材班
2017.12.11

パラリンピックまで残り1000日の節目を迎えたタイミングで気になる記事を見かけました。少し前の記事となりますが「五輪会場、車いす席不足 既存施設、8割が指針未満」というものです。※1

指針未満…といいますが、そもそも指針のことをほとんどのひとが知らないと思います。実際問題、オリンピック・パラリンピックなどの試合会場の「車いす席」ってどれくらいの数が必要なのでしょうか。

 

 

国際パラリンピック委員会(IPC)によると、車いす席には、実は3種類あります。

  1. 車いす席
  2. 同伴者席(コンパニオンシート)
  3. 付加アメニティ席

これらは全てほぼ水平な床面(勾配2%以下)に設置することが求められています。

車いす席は、一人で観覧する、もしくは車いすユーザー同士で観覧するための席のこと。同伴者席は、車いすの方と一緒に観覧する非車いすユーザーのための席のことです。「介助者のための席」ではなく「障害のある人と楽しみを共有する人」のための席なので、設置位置も車いす席の後ろではなく横に設けることとされています。また、付加アメニティ席は、車いすを使用していないけれど、歩行に困難がある方向けの席です。

付加アメニティ席という呼び名は初めて聞きましたが、言われてみると納得で、試合会場の通路や席は狭いことが多く、杖をついている人や義足ユーザーだと、転んだり、座りづらかったりするのかもしれません。

 

試合会場では座席だけでなくトイレの問題なども。

 

では、車いす席は、どのくらいの数が必要とされているのでしょうか?IPCによると、総座席数に対する車いす席の比率を以下の通りで規定しています。

 

 

オリンピック・パラリンピックでは障害のある人が観客として多数来場するため、他のスポーツイベントに比べて多くの車いす席が要求されているようです。

また、パラリンピックでは、車いす使用者が競技者として参加するかどうかで比率が変わります。車いす競技ではない場合1.0%以上とされていることに対し、例えば、車いすバスケットボールのような車いす使用者が登場する競技では1.2%以上が求められています。

車いす席が総座席数の0.5%や、1.0%という比率は多いのか、少ないのか?これは若干想像がつきづらい話です。

例えば、東京ドームと新国立競技場の比率を参考にするならば、現在の東京ドーム球場の収容人数46,000人(プロ野球開催時)に対して車いす席は12席。比率は0.026%。新国立競技場の基本設計案は、収容人数8万人に対して車いす席が120席〜400席。比率は0.0015%〜0.05%。東京ドームよりは多いもののIPCが求める比率には足りていません。

車いす席を確保するためにはスペースが必要ですが、一人でも多くの観客に来てほしい施設側としては、通常の観客席をなるべく多くしたいところでしょう。このせめぎ合いなのかもしれません。

 

コンサートホールなどでも同じ問題が起こります。

 

また、車いす席を設置する上で「質」も忘れてはならない問題です。「質」には「配置」と「視線の確保」があります。

車いす席の「配置」を考える上では

  • 販売価格、観覧方向、エリアがえらべること。
  • 付随すべき施設へのアクセス(トイレ、店舗、エレベーター)

という2点が重要視されます。

「視線の確保」は、車いす使用者の視線の確保についての考え方です。サッカーでシュートが決まったとき、多くの観客が立ち上がりますが、前の人が立ち上がったとしても、それに邪魔することなく車いす使用者の視線が確保されるようになるのか。これが一例です。

 

野球場でも同じこと。盛り上がって、前のひとが立つと…

 

施設や会場が誰にとって都合の良い作りになっていて、誰にとって不都合なものなのか。これは、パラリンピック会場だけではないはずです。当たり前に足を運ぶ中で、誰かが不自由を感じているのかもしれません。

今回は車いす席について調べましたが、これは障害に限らず、様々な背景に起因して「試合会場に行けない」「行っても楽しめない」という問題はあるはずです。試合会場に「誰でも足を運べる」「誰しもが楽しめる」という状態を作り出せるために、2020がいい契機となれば最高ですね。

 

※1 「五輪会場、車いす席不足 既存施設、8割が指針未満」毎日新聞(2017,4,6)

 

取材班ライター:森本しおり

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