スポーツ紹介

両足がない、両腕がない、そして健常者の100m自由形のタイムを比べてみた!

「障害者スポーツの未来」取材班
2017.12.04

100mを泳ぎきるのって、両足がない、両腕がない、健常者、フィンをつけたひとだとどのくらいタイムが違うのか。ちょっと試しに比べてみました。要するに、手で泳ぐのと足で泳ぐのとフィンを使うのとでは、どのくらい差があるのかということ。前回は、42.195kmをどれくらいで走りきれるか調べましたが、今回は水泳バージョン。比べる意味ある?とか言わないで(笑)!

 

 

フィンスイミング・・・33秒87

健常者・・・46秒91

S8・・・57秒21

S7・・・1分00秒37

S6・・・1分03秒93

 

一番速いのは、フィンの33秒87。さすがの速さ!フィンというのは、足ヒレをつけて泳ぐ競技。今回はサーフィスという一般的な種目の記録で、ドイツのMax Pochart選手が2017年6月26日に世界記録を更新したばかりです。

 

フィンスイミング。海の中を泳ぐときに使うのが”フィン”です。

 

健常者(あえて言いますが)の自由形の100mの世界記録はブラジルのC.シエロフィーリョ選手の46秒91。日本記録は藤井拓郎選手の48秒49。単純計算すると、学校にある一般的な25mプールは、11秒くらいで泳げちゃうということになります。分かってはいましたが、速い!

「いやいや、上の二つはわかるけど・・・ところでS6とかS8ってなに?」と思われた方。

これは障害者水泳のクラス分けの呼び名です。実は、調べ始めてから知ったのですが、「○○を切断したクラス」という分け方をしていないのです(※1参照)。

肢体不自由(手や足が不自由ということ)の自由形にはS1~S10までクラスがあり、数字が少ないクラスになればなるほど、障害の程度が重くなります。その中でも「両足切断」や「両腕切断」の方たちは、S6~S8のクラスで競っています。ちなみに、水泳では陸上競技と違って、補装具の使用は認められていません。

 

 

S6は「両大腿切断で両断端長が1/2以下のもの」「両上肢の欠損・短縮症でその長さが正常の2/3でさらに片大腿切断を有するもの」などと書かれています。難しく書かれていますが、要するに「両足の切断だったら、太ももが半分以上ない位のひと」のクラス。両腕がないだけではこのクラスに入れず、足にも何らかの障害がある必要があるそうです。半身麻痺の人もここのクラスにあたります。

S7のクラスは「両上腕切断」「両下腿切断で両断端長が1/2以下のもの」などと書かれており、「両上腕(肩からひじにかけて)の切断」もしくは「両足の切断の中でも、ひざ下の残りが1/2以下」のクラスにあたります。

S8のクラスは「両前腕切断」「両下腿切断で両断端が1/2より長いもの」です。「両方のひじ下を切断した方」や「ひざ下切断をして残りが1/2より長い方」のクラスです。切断部分だけでなく、残りの部分の長さがクラス分けに関わるそうです。

うーん・・・水泳のクラス分けって、想像より複雑。素人にはまったく分からない(笑)。

障害の場所や種類ではなく「水泳における残存能力(残った部分での推進力)」でのクラス分けだからでしょうか。「片まひの人と、両太もも以下切断の人って同じクラスなの?」とか「一緒に戦ったら、それぞれどんな泳ぎ方になるのだろう?」とか、調べるうちに知りたくなってきました。

 

私、泳ぐの下手くそなんで、両足ないのに泳げるって驚きしかありません。

 

「足だけで泳ぐ人と、腕だけで泳ぐ人はどちらが速いのか?」という素朴な疑問を解消するためにスタートしたこの記事ですが、世界記録保持者のS6のOlsson, Anders選手は脊髄損傷、S7のLevy, Matthew選手とS8のLeek, Peter選手は「脳性まひ」の方でした。女性の世界記録を調べても、両足切断や両腕切断の方は出てきませんでした。

ただ「両腕切断」でネットを調べていると、日本の選手もいるようです。アテネパラリンピックからリオデジャネイロパラリンピックまで4大会連続で出場されている中村智太郎選手です。平泳ぎなのでSB7というクラスです。

 

 

速い!観る前までは、足だけで泳ぐイメージがつきませんでした。「息つぎがむずかしそう。そして、ゴールの瞬間頭がゴツンと壁にぶつかるのが怖そう。」なんて思っちゃいます。

あと、個人的に驚いたのはこの動画。両腕がない選手の背泳ぎって、スタート前はタオルを噛んでおくのか・・・なるほど!

 

 

今回調べてみた結果は「障害者水泳は残存能力でクラス分けをされているので、両足切断と両腕切断の世界記録という形では見つからない」という意外なものでした。

困難の箇所が違う人が、同じ土俵で戦うからこそ泳ぎ方が変わる。選手によって泳ぎ方が違うのは、パラリンピック水泳ならではの魅力とも言えるかもしれません。

 

取材班ライター:森本しおり

※1  J-FCSクラス分け規則

http://new.paraswim.jp/wp/wp-content/uploads/2017/06/8eaaa58168542a41b07bc8dac1b1bcbc.pdf

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