アスリート

障害者アスリートを巡る、仕事と競技の両立の難しさ

「障害者スポーツの未来」取材班
2017.09.11

パラリンピックなどの世界大会を目指して活躍する障害者アスリート。ただ、その多くはアマチュア選手であり、プロアスリートとして活躍するひとはごく一部です。

最近では、2020年の東京パラリンピックの開催に向け、選手の強化支援や雇用協力が企業のブランド価値にもつながることもあり、障害者アスリートの積極的な採用活動が増えてきています。

従業員の2%は障害のある社員を雇用しなくてはならないという障害者雇用の法定雇用率の問題も後押しし、せっかくならば障害者アスリートを雇用しようというのは当然の流れと言えるかもしれません。

 

 

○Iさんの場合

大手メーカーの障害者雇用枠で就職。工場内の業務管理などの作業に従事している。月〜金曜のフルタイム勤務なので、競技種目の練習は平日夜間か土日になる。シフト制だとどうやって練習時間を工面するのだろうと疑問を持つ。郊外の街に住んでいることもあり、練習会場まで車で往復2時間はかかるため、夜間の練習はなかなかうまくいかない。

遠征がある場合には会社から配慮はしてもらえるものの、直前直後まで仕事が入ることは普通。代表の活動等で費用援助してもらえる場合はいいが、通常の練習にかかるコストは費用的にも時間的にも大きいものがある。今後のキャリアを考えたとき、アスリートとしての活動を続けるべきか、仕事で着実にキャリアを積んでいくか悩んでいる。

○Fさんの場合

自治体の職員として勤務。障害者福祉に関連する業務に従事していることもあり、職場での障害者スポーツに対する興味・関心も強く、練習への参加や遠征などによる長期不在時にもカバーしてくれる雰囲気がある。また、自治体のイメージアップにも繋がるのではないかという考えから、講演会やイベントなどで登壇する機会にも恵まれている。

競技と仕事との両立以上に悩んでいることは家族との時間があまり確保できないこと。仕事・スポーツ・家族という3つの時間をうまく作っていくことは簡単ではない。子どもも小学校に上がり、運動会や学芸会といったイベントごとにも参加したいパパとしての一面もある。

自分自身はあくまでもアマチュア。代表に選ばれたい気持ちもあるが、どこまで練習に時間を割くほうがいいのか悩むときもある。

○Cさんの場合

数名の従業員を抱える経営者として仕事をやりくりする傍ら、最近始めた障害者スポーツにのめり込み、せっかくならば代表を目指して取り組みたいと日々奮闘中。従業員からは「仕事に集中してください」「会社を大きくしましょう」という言葉が上がり、職場からの理解はまだ薄いと感じている。

経営者という職種柄、時間を作ることはそこまで難しくはない。それこそ、午前中に練習をすることもできる。取引先の社長が週3日は接待ゴルフしていることを見れば、代表入りを目指した練習のほうが誠実なのではないかと思ったりしている。

自分自身を会社の広告塔にすると考えるのであれば、競技を続けていく意味も増し、モチベーションも維持できる。経営者仲間や地域の仲間などにも、自分が取り組んでいるスポーツを広報することができ、競技にも貢献できているのではないかと感じている。

 

 

サラリーマン、自治体職員、経営者という3つのタイプの仕事と競技の両立状況に関するコメントを取り上げましたが、現状と今後を見据えたとき、どこまで競技にコミットできるのかという悩みや、自分以外の職場仲間との関係性をどう構築していくかという課題なども発生するのだと思います。

アマチュアスポーツだからこそ、どこまでやりきるかは自分次第の面もあります。成績が良い悪いによっても評価は変わります。障害の有無に関わらず、仕事と競技の両立に悩みを抱える場合はあると思いますが、このようなリアルを知ってもらうだけでも、考えるキッカケが与えられるだけでも、大切なのではないかと考えます。

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